「グエン」という新たな差別用語

ベトナム人による窃盗報道が頻発

2022年の夏頃から果物の窃盗を伝える報道を新聞やネット、テレビ等で見た方も多いだろう。

NHKのWebサイトからざっと集めただけでもこれだけの記事が見つかった。

ちゃんと探せばもっと見つかるはずだ。

(どの事件かは不明だが)犯人は見つかっており、桃や梨の窃盗容疑で逮捕、再逮捕されている。

また最近では窃盗に限らず、様々な事件でベトナム人が容疑者として報道される機会が増えた。

 

新たに生まれた「グエン」という差別用語

この手のニュースに対する反応をTwitterで見ていると、最近「はいグエン」「またグエンでしょ」といったコメントが目に付く。例えば「またグエン」で検索すると気が遠くなるほど大量のコメントが見つかるのがわかる。

 

 

更に検索を続けると、「またグエン人犯罪者か」「犯人はグエンだろ」「いい加減日本から追い出せ」など、ベトナム人の総称として「グエン」と呼んだり、ベトナム人を見下した表現がいくらでも出てくる。

中には「心がグエン化する」といった表現をする者もいた。あまりに酷い。

これらの表現は朝鮮人への「チョン」や中国人への「ちゃんころ」、また日本人への「ジャップ」「小日本」のような蔑称と同様の使われ方であり、もはや差別用語化していると言えるだろう。

侮蔑語である「チャンコロ」や「チョン」が「グエン」が同列に使われている例。

差別意識がなければこのような使い方はしない筈だ。

 

ベトナム人に「グエン」が多い理由

気になって調べてみたところ、グエン姓を持つベトナム人は4割近いらしい。

10人いたら4人が同じ姓というのはなかなかの衝撃だ。

日本人で最も多い姓は「佐藤」だが、ざっと計算すると約1.4%(184.2万人÷1億2483万人)しかいない。

そう考えると1つの姓が4割を占める、つまり1/3以上の人が同じ姓ということになる。驚異的な数字だ。

 

それ、国籍差別です

窃盗に限らず、ベトナム人が容疑者として報道されるたびに高確率で「グエン」が出てくることで「またか」と感じること自体は自然な反応だろう。

ただ、それが行き過ぎて「ベトナム人が容疑者=グエンだろう」という短絡的な決めつけが多発しており、またそれに関連してただの国籍差別としか言えないコメントがSNSで気軽に発信されてしまっていることが問題だと感じる。

ベトナム人による犯罪が増えていること自体は事実だが、そうであれば「ベトナム人による犯罪が増えている」と言えばいいだけの話で、わざわざ特定姓と結びつける必要はないし、茶化すなんて以ての外だ。

 

差別用語が生まれた瞬間

こういう話をすると「いや別に差別をするつもりで書いたわけでは」という反応が返ってくるだろう。半分は正しいが半分は間違っている。

例えば2chで多用されていた「ファビョる」や「チョウセンヒトモドキ」のような韓国人への差別用語は、初めは笑いとともにネタとして生まれたと記憶している。差別用語というのは往々にして加害者側が気軽に使い始めるものだ。

しかし、本人にその気がなかったとしても、気軽につぶやいただけだったとしてもその行為が許されるわけではない。差別は差別だ。

Twitterのコメントは特に酷いものをピックアップして引用したが、ベトナム人のことを「グエン」と呼ぶこと自体が差別の始まりだと感じている。

途中から説教臭くなってしまったが、「差別用語が生まれる瞬間を目の当たりにしてしまった」ことを記録するため、普段とは少し毛色の違う記事を書くことにした。

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