[中国]トランジットビザ免除措置を利用して144時間ノービザ入国する

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ビザ免除措置が再開されていない中国に入国するため深圳のアライバルビザを取ったり、観光ビザを申し込んだりしているが、実はもう一つビザなしで中国に入国する方法がある。

それは「トランジットビザ免除」措置である。英語では"transit without visa (TWOV)"というらしい。

 

トランジットビザとは?免除?

「トランジットビザ」はトランジット(乗り継ぎ)目的で指定された都市に立ち寄るためのビザだが、特定の条件を満たせばこのビザ要求が免除され、ノービザでの入境(停留)が許される。

日本人の場合、都市によって最大144時間(6日)または72時間(3日)の滞在が許可される。

ただし、あくまで「トランジット」ビザの免除なので、異なる国または地域へ移動(乗り継ぎ)しなければならない。

 

異なる国(または地域)へ移動する例

  • ❌日本(東京) → 中国(北京)滞在 → 日本(大阪)
    • 乗り継ぎ元と乗り継ぎ先が同じ国なので滞在NG
  • ⭕日本(東京) → 中国(北京)滞在 → 韓国(釜山)
    • 乗り継ぎ元と乗り継ぎ先が違う国なので滞在OK
  • ⭕香港(別地域扱い) → 中国(杭州)滞在 → 日本(東京)
    • 香港は別地域扱いなので滞在OK
  • ⭕日本(大阪) → 中国(西安)滞在 → 台湾(別地域扱い)
    • 台湾は別地域扱いなので滞在OK

第三国(または地域)を挟まないといけないので通常のビザ滞在と比べて無駄な時間とお金がかかってしまう上、滞在可能期間も短いが、面倒なビザ申請手続きをしなくても最大で6日間の滞在ができるのはかなりありがたい。

ちなみにマカオ、香港、台湾は別地域扱いで乗り継ぎにカウントされるので、ビザ免除目当てとりあえず乗り継ぎたい場合はこのへんが狙い目かも。

 

 

滞在が許される都市(2023/5/23当時)

144時間の滞在ができる都市は、北京、天津、石家荘、秦皇島、上海、杭州、南京、瀋陽、大連、青島、成都、廈門、昆明、武漢、広州、深圳、掲陽、重慶、西安、寧波の20都市。

72時間の滞在ができる都市は、長沙、桂林、哈爾濱(ハルビン)。

※↑はわりと頻繁に更新されており、ネット上の情報が古い場合があるので注意(↓のWikipediaも古い)。

また、上には都市しか書いていないが、実際は入国できる地点(空港・駅・港)が限定されているので事前に調べておくこと。

北京・天津・河北行政エリアのように複数の地域内を移動できるケースもあるが、通常は入国した都市(の定められた特定の地域内)にしか滞在できないため、複数の都市を移動するような場合は利用できない可能性がある。滞在可能エリアも事前に調べておくこと。

ちなみに(都市を問わず)空港から出ない場合は24時間以内であればトランジットビザが免除されるが、この制度では空港から出られない(本当に飛行機の乗り継ぎしかできない)ため滞在目的での利用はできない。

 

注意事項①

先にも説明したように、この制度を利用するにはA国→滞在都市→B国へ乗り継ぐ必要がある。

これは直行便が飛んでいる都市でないと乗り継ぎを成立させるのは難しいということでもある。

例えば大阪から成都に移動して144時間滞在することを想定し、大阪→成都→香港→大阪と移動を画策したとすると...

大阪→成都の航空券を探すと、直行便がなく上海や北京経由になってしまう。これでは大阪→上海→成都と移動することになってしまい第三国への乗り継ぎが成立しない(大阪→上海までは良いが、その次は第三国に行く必要があるため。つまり当制度で中国国内で乗り継ぐルートを選択することはできないということ

幸運にも成田→成都を飛ぶ四川航空の直行便があったため、大阪→東京と国内移動してから成田→成都と飛び、あとは成都→香港の直行便に乗れば第三国(地域)への乗り継ぎが成立する。

といったように、直行便で移動できないとトランジットビザ免除ルールに従った乗り継ぎをするのが難しいため、事前のルート決めが非常に重要となる。

ちなみに、上で書いた「複数の地域内を移動できるケース」であれば地域内の移動はできるため、大阪→北京→天津→香港とか大阪→上海→杭州→香港といったルートは取りは可能(とはいえ「複数の地域内を移動できるケース」は大抵が大都市なのでそもそも直行便がありそうだが...)

 

注意事項②

上で書いた「24時間以内であればトランジットビザが免除されるが、空港からは出られない」に関連して注意事項が一つ。

乗り継ぎが24時間以内で済んでしまう場合は24時間ルールの方が強いのか、空港から出してもらえない(72/144時間の停留許可が出ない)例が多数あり。

同様の報告が北京に集中しているのは...なんなんだろうか。

24時間以内の場合は(同一都市の別空港で乗り換えなど)どうしても入国しないといけない理由がないと難しいのかも。

(一番上のツイートの方のみ例外的に24時間の臨時入境許可が貰えている)

 

バラ売りチケットじゃダメ?

中には「スルーバゲージでないとダメ」というコメントがちらほらあるのも気になる。

規定上は「联程机票(連続したルートの航空券)」でないといけないらしい?という話と関係がありそうだ。

3.トランジットの航空券は、その都市で「乗り継ぐ」事前に通しで発券された1枚のチケット(联程机票)である必要がある。つまり、例えば「東京→上海」と「上海→香港」という2枚の片道チケットを別々に持っていてもダメで、「東京→上海→香港」という一枚のチケット(航空券番号が1つ)でなければならない

確かにビザ申請サイトでは「144小时内已确定日期和座位前往第三国/地区的联程机票,可免办签证自有关口岸入境」と記載がある。

ただ日本語版では「外国人は座席が確定された乗り継ぎ航空券を所持して」という文面になっている。どっちが正しいのか...。

でも最大で6日も滞在するのに一繋がりでスルーバゲージの航空券なんてあり得る?

 

「联程机票」とは何か

联程」という単語は確かに「繋がる」「一繋がりの」と読むことができる。

「同一チケット、同一航空機でのフライトを指す」と解説している記事もある。ただこの記事でいう"联程"とは、途中で別の飛行機に乗り継ぎをする"中转联程"との対比として狭義の(フライトの途中で何度か経由地に着発する同一の飛行機に乗り続ける)"联程"を紹介しているように見える。

実際、辞書を見る限りでは「乗り継ぐ.~机票/乗継便の航空券.」と書かれており「乗り継ぎ」と解釈するのが自然だろう。

百度百科の「联程机票」ページでは「それぞれのセクターでフライトが異なり、さらに航空会社も異なるため"途中降機"が必要となるもの(DeepL翻訳)」と書かれており、やはり複数フライトが前提で書かれている。

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また当該ページに掲載されている写真↑を見る限り(航空会社こそ同一だが)2枚のチケットが映っていることからも「联程机票」が「一枚のチケットでないといけない」と読み取ることはできない。

実際のところバラ券でも大丈夫だったという成功報告は複数観測済みなので問題はないと思われるが、文言の解釈違いや時期や空港によって変動する可能性もあるため断言することはできない。

 

おすすめの経由地

行きたい都市にもよるが、距離や航空便の多さを考慮すると一番のおすすめは香港

日本からも中国大陸からも便数が多くて利便性が高く、航空券の値段もだいぶ下がってきている。

空港によっては深夜便もあるので、前日夜~朝方に香港へ移動し、当日の午前中に目的地へ移動するようなスケジュールを組むこともできる(ちょっとハードだけど...)。

あとマカオも案外と日本への直行便が多くて値段も安めなので狙い目。逆に台湾は未だ便数が少なく意外と時間がかかる。

LCCのセールなどをうまく活用すれば韓国を経由するルートも開拓できそうなので調べてみてほしい。

もちろん「一度行ってみたい国」があるのであれば、トランジット本来の目的通り、中国大陸を乗り継いでその国へ行くのが一番だが。

 

トランジットビザで中国に入国する方法

  1. 第三国(または地域)を経由して中国を入出国する航空券を予約する。乗り継ぎ先への航空券も必要。
    • トランジットビザ免除対応を明言している航空会社がオススメ(例:厦門航空
  2. 中国滞在中のホテルを予約する。
  3. 航空券のeチケット(旅程表)とホテルの予約確認書を印刷し、パスポートと一緒に持っていく。
  4. 乗り継ぎ前の国から出発する。
    • チェックインの際にビザを確認され「ビザ持ってないのに中国に行けると思っているのか?」と聞かれるのでトランジットビザ免除で入国することを航空会社に伝える
    • 航空会社職員がトランジットビザ免除措置を知らず、チェックインに手間取る例をかなりよく見るので注意。
    • 免除措置の概要が分かるサイト文章を提示するとか、なるべく中国のメジャーな航空会社を選ぶとかして無用なトラブルを避けるのが吉。自社Webサイトで紹介してる厦門航空ですらスタッフが知らなかった例(Youtube動画)があるため、紙に印刷しておいて渡せるようにしておくことを強く推奨する。
  5. 中国の空港に着いたら、専用窓口でトランジットビザ免除の手続きを行う。
    • 免除を受けるための窓口は空港によっていろいろバリエーションがある様子:
    • 北京首都国際空港では「臨時入境許可申請」の窓口があるらしい
    • 広州白雲国際空港では「24/144小時臨時入境許可申請」の窓口があるらしいより詳細な記事)。
    • 上海浦東国際空港では入国審査場にトランジットビザ免除入国者向けのレーンがあるらしいより詳細な情報)。
  6. 「臨時入境外国人入境カード」に記入し、専用窓口でパスポート&事前に印刷したeチケットとホテルの予約確認書を提示する。
  7. 内容に問題がなければパスポートに「臨時入境許可」のステッカーが貼られる。時間(72時間または144時間)が間違っていないか確認すること。
  8. 通常の入国審査場に向かい、パスポートを提示して入国審査を受け入国する。
  9. 「臨時入境許可」のステッカーに書かれた期日までに乗り継ぎ先の国に出国する。

 

実際にトランジットビザ免除で中国に入国する

直近で杭州に訪問する用事があったため、香港を経由してトランジットビザ免除での中国入国にトライしてみた。

旅程は日本→香港→杭州→日本。

日本を深夜に出発して早朝に香港着、翌朝には杭州に飛ぶことで、香港を挟むことで生じるタイムロスを圧縮した(寝不足確定)。

 

空港と航空会社、ホテルの選定

まずはこちらのサイトで「杭州市の杭州蕭山国際空港から入国する場合、上海市、江蘇省、浙江省に144時間滞在することができる」との記載を見て、杭州蕭山国際空港からトランジットビザ免除で入国可能であることを確認。

次に航空会社の選定だが、日本→香港は特に制限はないので適当に香港航空を選択。

(公式サイトから購入したがWebシステムの動作が怪しく、予約後に個人情報が消えたり、クレジットカードは全然決済が通らなかったり酷い有様だった)

香港→杭州、杭州→日本は上で挙げた厦門航空がどちらも飛んでおり、トランジットビザ免除対応も明言しているため適任と判断。

ホテルはTrip.comで適当に選択。ただし滞在可能地域(今回なら上海市、江蘇省、浙江省)であること。

eチケットの控え、ホテルの予約表に加え、厦門航空Webの中国語版と中国政府の「日本人へのトランジットビザ免除再開」発表ページ(下部参考リンク参照)を紙に印刷して用意しておく。

 

日本から香港へ飛ぶ

受託手荷物があったため香港航空カウンターで手続きすると、片道切符だったためか「香港在住ですか?」と聞かれる。

「日本→香港→大陸と移動します」と答えると「中国大陸のビザがないようですが...」と言われた。やはりその話になるか。

トランジットビザ免除措置の説明が面倒だったので「短期滞在ができるのは持ってます」とボカして言ったが深く追及はされなかった。まぁ日本→香港のフライトでは直接は関係ないもんね。

その他は特に問題なく香港に到着。空港で一晩を明かす。

 

香港から杭州へ飛ぶ

一つ目の難関である杭州行きのチェックイン。

厦門航空のカウンターでパスポートを見せると案の定「ビザがないのですが」と言われたので、事前に印刷しておいたWebページを見せて「これを使って入国したい」と伝える。

旅程表とホテルの予約表も一緒に渡すと、流石に自社のWebサイトに書かれている内容なのですぐ理解してもらえた。

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スタッフ間でしばらくやり取りがあった後、「杭州蕭山国際空港の税関に連絡が必要なのでしばらく待ってくれ」と言われた。

カウンターの横で待っているとスタッフがしきりに電話をしており、「あー結構面倒くさい手続きなんだなぁ。参考にしたブログ主も皆スタッフに対して申し訳なさそうにしてたのはこういうことか」などと考えていると、

スタッフから「スタッフ→厦門航空の専門部署→向こうの税関というルートで連絡が必要なのでもう少し時間がかかる」と説明があった。申し訳ない。

結局20分ほど待ったところでチケット発行。「万が一何かあったら搭乗ゲートで呼び止めるね。大丈夫だと思うけど」と念を押された。

中国あるあるの突発的な理不尽への予防線か。航空会社も大変だ。

 

杭州蕭山国際空港で臨時入境許可申請

搭乗ゲートで呼び止められることもなく無事飛行機に乗り、杭州に到着。

そのまま入国審査場まで進むと「72/144小時臨時入境許可申請」の看板があり(こんなやつ↓)

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矢印の方を見るとデカデカと「臨時入境許可申請」と書かれた専用のカウンターがあった。しかしカウンターは無人

仕方なく整列のスタッフに紙を見せて「これで入国したい」と伝えると「ビザは無いのか?」「うん、無いよ」という会話の後、確認してくれることに。

確認の結果「臨時入境カードを書いたらそのまま入国審査に並べばいいよ!」という回答が。

そんなわけあるかい!」と思いながらも臨時入境カードを書き、「書いたよ~」とスタッフに伝えて誘導されるがままに入国審査の列に並んでいると、別の若い入国審査員に呼び止められ「ちょっとこっちに来てもらえるかな?」と私一人だけ別室に連れていかれることに(絶望)。

 

絶望...の取り調べ

入国審査で別室にお呼び出しされるのは初めてだし、ネットで調べた時にはそんな対応をされた例を見なかったので流石にビビる。

ただ書類上は何の問題もないはずなので、初手で持っている書類を全部出し、航空券も渡し、相手に委ねることに。

すると上司と思われる女性が入ってきて、マンツーマンでPCの入力方法を指導し始めた。

「ははーんなるほど。私を連れてきた若い入国審査員に臨時入境の手続きを教えるためにここで手続きするんだな」と思うとちょっと安心できた。

とはいえ、個室で二人に囲まれて拙い中国語で必死に説明するのはかなり大変だった。

 

後は普通の審査(ただし個室)

上司が手取り足取り指導しながらパスポートや臨時入境カード、航空券をスキャンする姿を見届け、

旅程やホテルの宿泊日数を説明し、

日本→香港のチケットに書いてある「OSAKA TO HONGKONG」のOSAKAがどこか認識してもらえなかったので「OSAKAは大阪だ。日本だよ」と説明し、

例の顔写真と指紋を取る機械で生体情報を収集され、最後にパスポートに「臨時入境許可」のステッカーを貼ってもらった。

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これさえ貰えればもう安心だ。よかったー。

 

通常の入国審査ゲートは通らず

「臨時入境許可」をもらった後は入国審査に向うかと思いきや、そのまま受託手荷物受取口の方へ通過させてもらえた。

入国審査員2人がかりで確認済みなので再度入国審査をする必要はないということだろうか。

事前に調べていた例では再度入国審査の列に並ぶというケースが多かったのだが。

この辺は空港によって、またスタッフによって対応が違うかもしれない。

 

ホテルでは毎回聞かれる

ホテルでのチェックイン時、パスポートを渡すと毎回「ビザが無いのか?」と聞かれる。

杭州では臨時入境はそこそこレアなんだろうか。

「臨時入境だよ」と当該許可シールを見せると納得してもらえたので特に困ることは無かったが。

 

出国時は臨時出境カードを渡す

臨時入境カードは上下で入境と出境が切り離せるようになっており、入境側は「臨時入境許可」をもらう際に切り離され、残りの出境カードを受け取っていた。

出国時はこれとパスポートと航空券を渡せばいい。通常の出国カードと同じ扱いなので難しくは無いだろう。

出国審査でも特に問題は起きなかった。

どちらかというと「中国出国時も健康QRが必要」ということを知らず、そっちの手続きで手間取った。

WeChatミニアプリの方では「自分でコロナ検査した結果」を選択する項目がなくて心配だったけどそのまま通れた。誰もチェックしてないっぽい。

 

ということで

チェックイン時と臨時入境許可をもらう場面が難関ではあったが、何とかビザなし入国することができた。

前者は先に諸々を紙に印刷しておくことで対応できたのがデカかった。

後者はケースバイケースな点が多いので難しい所だが、手続き自体は書類に不備がなければ問題ないはずなので、そこに到達できれば大丈夫だろう。

カウンターが無人というのは他の空港でもあるあるらしいので、そういう状況を事前に予期しておき、近くのスタッフに聞くなり、近くにいなければ入国審査に並んじゃってそこで聞くなり、臨機応変な対応が求められる。

 

参考リンク

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