Xiaomi 11T Proのバッテリー交換にあたり、 ネット上の情報を見ていると
「自力でスマホのバッテリーを交換するのは改造行為にあたり、違法である」という戯言(書き込み)を見た。
↑自分でスマホのバッテリー交換を行っている様子。これも違法行為になってしまうのであろうか。んなわけがない。
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Xiaomi 11T Proのバッテリー交換にあたり、 ネット上の情報を見ていると
「自力でスマホのバッテリーを交換するのは改造行為にあたり、違法である」という戯言(書き込み)を見た。
↑自分でスマホのバッテリー交換を行っている様子。これも違法行為になってしまうのであろうか。んなわけがない。
おそらく下記のような言葉足らずの記事を見て「メーカー以外の修理は全てNG」と勘違いしたのだろう。
製造元のメーカー以外がスマートフォンを一度でも分解したり改造したりすると、その時点で技適から外れてしまい(電波法38条の7第4項)、その後に無線機能を使うと電波法違反に問われる可能性がある。
ネット上のこういった噂というのはたちが悪い。
どう考えてもそんな訳がないのだが、一応ちゃんと調べておかないといけないと思い、備忘録を残しておく。
この噂の元になったのは平成27年に創設された「登録修理業者制度」である。
これは「スマホは技適取得が必要な『特別特定無線設備』なので、修理する際には適切な修理手法を用いていることが分かるようにしたいね」という考えの下で創設された制度だ。
厳密には「電波法に基づく登録修理業者制度」と「電気通信事業法に基づく登録修理業者制度」があるのだが、この記事ではスマホ修理に関係がある前者(電波法に基づく登録修理業者制度)について記述する。
総務省Webサイトの「登録修理業者制度」ページを見ると、下記のように書かれている。
登録修理業者制度による登録を受けた者(登録修理業者)として修理を行おうとされる方は、電波法及び電気通信事業法の2つの法律について、それぞれ登録の手続きを行うようにしてください。
つまり「修理業者が『登録修理業者』としてスマホを修理をしたいなら登録してね」ということ。
当然、修理「業者」と書かれている以上、当制度に登録する主体は業者であり個人ではない。個人は当制度の対象外ということになる。
(個人事業主か法人か、みたいな話ではなく、業として修理を行っているという意味での「業者」という話なので、自分のスマホを自分で修理する場合はどう頑張っても対象にならない)
また同ページには下記のように書かれている。
登録修理業者以外の者が特別特定無線設備に変更の工事を行った場合は、電波法第38条の7第4項に従い、技術基準適合証明、工事設計認証、技術基準適合自己確認に係る表示を除去しなければなりません。
これは一見すると「登録修理業者以外」が修理をした場合は技適表記の除去(技適の取り直し)が必要であるように読んでしまいそうになるが、あくまでも「特別特定無線設備(=スマホ)に変更の工事(=性能が変わる改造)を行った場合」の話であり、ただバッテリーを交換するような修理行為は該当しない。
「変更の工事」とは、製造事業者が、技術基準適合証明を受けるときに、無線機器の設計を提出して証明を受けますが、その設計の内容と違ったような改造を行う場合等をいいます。
なお、一般的な修理については、故障、破損、劣化等の箇所の本来の状態・機能に復帰させることであり、仕様の変更のような本来の状態・機能からの変更は含みません。
↑を見てもわかるように、ただ一般的な修理をするだけであれば「本来の状態・機能に復帰させること」でしかなく、変更(改造)にはあたらないと明記されている。
つまり「バッテリー交換程度の修理で技適が無効になることはない(=違法にはならない)」ということである。
そもそも、当制度はあくまでも修理業者が「きちんと修理をしていることを表示するための登録制度」である。
つまり「登録しないと違法」とか「登録しないと罰則を受ける」という話ではない。認定を受けて「私たちは登録業者ですよ」と表示するイメージ。
本制度は、登録に際し、修理の箇所及び修理の方法が適正であって修理後の無線設備が技術基準に適合していることを自らが確認できる等、電波法で定める登録の基準に適合する場合に、総務大臣の登録を受けることを可能とするものです。
特別特定無線設備の修理を行おうとする修理業者は、電波法第 38 条の 39 の規定により総務省令(登録修理業者規則第 2 条)で定める手続きを行い、電波法第 38条の 40 第 1 項第 1 号及び第 2 号に定める基準に適合しているときは、登録修理業者として総務大臣の登録を受けることができます。
上記「登録を受けることができます」や「可能とするものです」ということは、あくまでも「登録を受けたい業者は受けられます」ということであり、裏を返せば「登録を受けなくても別に構わない」ということになる。
ただし、登録しない場合は、その業者が行う修理は法的には「登録修理業者制度に基づかない修理」となり、その場合は「登録修理業者が修理を行ったことを示す表示」ができなくなる。
それにより消費者からすれば「この業者は登録修理業者ではないんだな」とわかってしまい、不利なりますよ。というだけの話である。
登録のない特別特定無線設備の修理は、登録修理業者制度に基づかない修理となります。
登録修理業者が修理した特別特定無線設備には、登録修理業者規則別表第 8 号に従い、登録修理業者が修理を行ったことを示す表示(表示する場所に制限はありません)を行う必要があります。(電波法第 38 条の 44 第 1 項)
当制度は言ってしまえば「ただの登録制度」であり、業者には登録の義務も罰則もない。
たとえ業者が登録なしに修理したとして何の問題もない(登録修理業者ではないのに登録修理業者を騙って修理するのはダメだが)。
ましてやそもそも当制度の対象外である個人が行う修理には何の関係もない。
ということで、「自分でスマホのバッテリーを交換することは何ら問題ない」のである。
当然、不正改造に該当する変更を行えば罰せられるわけだが、それは既存の電波法が定めるものであり、当制度によるものではないし業者であろうが個人であろうが関係はない。この違いは明確にしておかないといけない。
あなたのスマホ修理しただけで違法端末に!? | AERA DIGITAL(アエラデジタル)
上記のような立場のあるメディアが「法律の解釈次第では」などという逃げの枕詞を付けた上で「スマホを修理しただけで違法」といった戯言を掲載し続けているせいで当制度への誤解が広まり、「個人がバッテリー交換するのは違法だ」などといった出鱈目が広まっているのは大変残念な話である。
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